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小説の前半は、いわゆる心理小説の様相を呈しているが、後半になるにつれて人間存在の奥底まで照射する筆力で法廷ミステリーの趣までも呈する、いわば二重の螺旋構造となっていて最後まで読者を飽きさせない一粒で二度美味しい小説だ。
読者の中には、結末に納得いかない人もいるかもしれない。あるいは全ての解を得られないと不満を漏らす御仁もおられるかもしれない(私達は、話にケリをつけることで、往々にして「分かった」つもりになっている)。
しかし本作の魅力の一つは、「閉じられていない」ところにもあるのだ。つまりは各自で回答を探し出す喜びを作者は提供してくれているとも言える。本書はそんな「余白」を残してくれている作品なのだ。
観察力と洞察力のベースに人間としての優しさが見え隠れする物語。優しさに裏打ちされた強さをもつ作者の本作を、どうか味わい尽くしていただきたい。(「はじめに」より)
【レビュー】K.T.さん
「緋色の契印」を読ませていただきました。グングン引き込まれて、家事仕事をしながらほぼ一昼夜で読み終わりました。少しだけ、ささやかながら感想を。
赤嶺さんは生きにくい人生ながら、佐和子さん、轟さんの他に信頼できる松岡さんが居てくださりホットしました。主人公の轟さんは他人との距離の取り方も適切、おもねることも蔑むこともなく、バランスの取れた方、その上、優しさと人としての品を兼ね備えてる方ですね。
証人としての発言は優しさに溢れ秀逸さにつつまれました。(殊に137頁4行目)、まさに私が目指したい理想像です。
また、『赤嶺の心の奥底にある動かしがたい障害物を、あえて、「岩」と表現した』、年を重ねてくると、自分自身への至らなさの自覚も増えて、赤嶺さんの「岩」と同じものを持つ自らに気づかされます。
しかし、ここで救われたのは、深遠な宇宙に向けて放つ火(=緋)は、人間の持つ業を浄化してくれる、それは人間と宇宙の約束事、「契印」と。私はそのように読み解きました。
あとがきで「妻への感謝」、大きな贈り物ですね。奥さまの喜びが伝わります。
さすがですね。心地よい読書時間でした。
しかし、ここまできて、お忙しい中ですのに、小説を書こうとしたきっかけは何だろうと、お聞きしたくもなりました。






